平成17年度鹿児島大学大学院連合農学研究科入学式祝辞
皆さんご入学おめでとうございます。
皆さんの入学した鹿児島大学大学院連合農学研究科は、学長の告辞に述べられましたように4つの国立大学法人によって設置され運営されていますが、みなさんの考え方、希望しだいで、将来大いに発展の可能性のある農学研究科のシステムの一つであります
21世紀は学問分野の再編を予感させるものがあります。科学は、原子科学から生命科学へ、細分ミクロ化から総合マクロ化へ、と展開しています。農学の分野も例外ではなく、食糧問題、人口問題、環境問題などマクロな諸問題?難問を分子原子のレベルから解決することが求められる情況にあります。ミクロ化は専門をより一層の深さへと導きますが、マクロ化は多様な知識とそれらを駆使する学際的洞察力を必要とします。本大学院は農学研究科の連合ですが、みなさんを指導する先生方は4つの国立大学法人のいずれかに籍を置いています。先生方の繋がりを通じて皆さんは4つの大学の知的財産の恩恵を得ることが出来ます。このように、大学院連合農学研究科は学際的で総合的な洞察力を養うのに最適なシステムと言って良いでしょう。
皆さんは博士後期課程の学生ですが大学では研究者の一員として扱われます。大学は教育機関であって研究所ではありません。しかし一方、大学はわが国の研究活動の最先端組織として期待されています。先生方は、皆さんが出来るだけ速く研究の相談相手、良きパ-トナ-になられることを期待して指導に望みます。厳しい指導を覚悟してください。皆さんはそれぞれ所属する研究室の主要な担い手となるからです。
ノ-ベル医学?生理学賞を受賞された利根川進先生は、数年前佐賀大学で講演されたとき、「一人前の研究者になる早道は?」との大学院生の質問に「師事した先生の考え方、研究の進め方、試験管の扱い方に至るまで全てを真似しました」と答えられました。この答えが全てとは思いませんが、率直な答えに妙に説得力を感じました。
20世紀に引き続き今世紀も科学技術は進歩し続けるでしょうが、時としてその異常とも言える発展は、人類と自然に対する不安と危惧の念を増大させています。農学の分野は自然の営みに常に立ち戻りながら、自然の仕組みに学びながら、発展してきた学問のように思われます。科学技術を進める空間に「安心と安全な環境」と言う座標軸を新たに加え、新しい科学技術の方法論を開拓展開していただけることを期待して祝辞といたします。
平成17年4月11日
国立大学法人佐賀大学長
長谷川 照